小物部品の少量生産で「ベストパフォーマンス」を実現する秘訣 – 榊原工機のものづくり哲学

2025年9月15日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

愛知県春日井市にある有限会社榊原工機は、「少量・試作にトコトン強い会社」として業界で確固たる信頼を築いています。手のひらサイズの小物部品を中心とした少量生産と試作開発において、なぜ私たちがお客様から「機械部品加工の駆け込み寺的存在」と呼ばれるのか。その秘訣を詳しく解説します。

クリエイティブな思考プロセス:「頭を旋盤のように高速回転」させる最適解の追求

材料選定から始まる最適化戦略

お客様から部品製作のご依頼をいただいた時、私たちのエンジニアの頭の中では瞬時にこんな問いが浮かびます。「材料は角から削ろうか、丸から削ろうか」。この一見シンプルな問いの裏には、コスト、品質、効率性を左右する重要な判断が隠れています。

角材からの削り出しの場合:

  • 直方体に近い形状の部品では、平面を基準にした加工が容易
  • 複数部品を一度に加工する「ワークアレイ」が可能
  • ただし、丸みを帯びた部分が多いと材料ロスが増大

丸棒からの加工の場合:

  • 円筒形状や回転体の部品に最適
  • 材料ロスを最小限に抑制
  • 同心度や真円度が求められる部品には理想的

私たちは部品の最終形状、使用される材質の特性、そしてお客様のコスト目標まで総合的に考慮し、最も効率的で品質を確保できる材料を瞬時に判断します。

設備稼働状況に応じた柔軟な機械選定

「5軸加工機や複合加工機なら穴加工まで1台でできるけど、あいにく今日は2台とも埋まっている」。このような状況は、特に多品種少量生産の現場では日常的に発生します。

しかし、私たちは決してそこで思考を停止しません。榊原工機では「柔軟な小ロット生産を実現するバリエーション豊かな設備群」を保有しており、5軸加工機や複合加工機だけでなく、汎用性の高いマシニング加工機、NC旋盤、ワイヤーカットなど精密加工機をバランス良く完備しています。

「特急案件だから、すぐ動けるマシニングと旋盤で工程を組もう」という判断は、複数の機械の特性と現在の稼働状況を瞬時に把握し、最適な組み合わせを導き出す多能工ならではの思考プロセスです。

精密な工程設計の重要性

材料と機械の選定が完了すると、次は具体的な工程設計です。「どの順番で削るのがベストだろうか。固定治具は。プログラムは」という問いには、熟練の技術と豊富な経験が不可欠です。

加工順序の最適化: 部品は一度に完成するものではありません。どの面を最初に加工し、次にどこを削るか。熱による変形、切削抵抗、工具の摩耗、そして最終的な精度を考慮し、最も安定して高精度に加工できる順序を組み立てます。特に薄肉部品や複雑な形状では、加工順序一つで品質が大きく左右されるため、多能工エンジニアの経験と知見が光る部分です。

固定治具の工夫: 加工中に部品が動いてしまっては、どれほど高精度な機械を使っても意味がありません。部品の形状、材質、加工箇所に合わせて最適な固定方法を考案します。既製の治具では対応できない場合は、自社で専用治具を設計・製作することもあります。

「考えて動く多能工エンジニア」の総合力

複数の加工技術への精通がもたらすシナジー効果

榊原工機のエンジニアは「旋盤、マシニング、ワイヤー加工が特に得意」とされており、複数の加工技術に精通していることが大きな特徴です。この「多能工」であることは、小ロット生産の現場で絶大な威力を発揮します。

例えば、マシニング加工中に予期せぬ問題が発生した場合を考えてみましょう。特定の加工技術に特化したエンジニアであれば、その解決策もマシニングの範囲内でしか考えられないかもしれません。しかし、多能工のエンジニアは、ワイヤー加工や旋盤加工といった別の手段の可能性も視野に入れ、より柔軟な解決策を導き出すことができます。

工程間のスムーズな連携: 小ロット生産では、一つの部品が複数の機械を経て完成することも珍しくありません。多能工のエンジニアは、次の工程でどのような加工が行われるかを理解しているため、前工程の加工方法を最適化し、全体としての効率と品質を高めることができます。

材質を問わない対応力と深い専門知識

「精密切削加工のプロ」として、私たちは「材質を問わず様々な加工に対応」しています。金属(ステンレス、真鍮など)から樹脂に至るまで、幅広い材料の特性を熟知していることは、お客様の多様なニーズに応える上で不可欠です。

材料特性に応じた最適な加工条件: 材料によって硬度、熱伝導率、粘り強さ、溶融温度などが異なり、それぞれに最適な切削工具、切削条件(回転数、送り速度、切削深さ)、そしてクーラント(冷却液)が存在します。

例えば、粘り気の強いステンレスと、脆性の高い鋳鉄では、全く異なる切削条件が求められます。私たちはこれらの知識を総動員し、材料の特性を最大限に活かしながら、工具寿命を延ばしつつ高精度な加工を実現しています。

難加工材への挑戦: 「焼入れ鋼に追加工は可能か」といった難易度の高い加工依頼に対しても、私たちは常に挑戦を恐れません。これは深い知識と経験に裏打ちされた自信があるからこそ可能なことであり、他社が断るような案件でも、解決の道を探ることができるのです。

品質への徹底的なこだわり

「ベストパフォーマンス」を実現する上で、品質は最も重要な要素の一つです。榊原工機では、品質に対する徹底的なこだわりを持っています。

私たちが「不良品を捨てる」という厳しい判断を下すことがあるのは、お客様への最終的な製品の品質に対する誠実さの表れです。特に試作品においては、後の量産に繋がる重要な信頼性となるため、妥協は許されません。

多能工エンジニアは、自身のスキルと経験を駆使して不良品を未然に防ぎ、万が一発生した場合でも、その原因を深く掘り下げて再発防止に努めます。エンドミルの切れ味を保つ秘訣など、工具へのこだわりも品質を支える重要な要素です。

バリエーション豊かな設備群による柔軟な対応力

多様な設備群が生み出す選択肢

榊原工機は「柔軟な小ロット生産を実現しているバリエーション豊かな設備群」を保有しており、その中には「5軸、複合加工機、ワイヤーカットなど」が含まれます。

多機能設備の戦略的活用: 5軸加工機や複合加工機は、複雑な形状の部品を一回の段取りで多面加工できるため、加工精度を高め、工期を短縮します。これらの最先端設備は、多能工エンジニアのクリエイティブな発想を具現化するための強力なツールとなります。

実際に、私たちが開発した高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」は、この5軸加工技術から生まれたものです。そのデザイン哲学と削り出しのこだわりは、設備の能力を最大限に引き出した結果と言えるでしょう。

精密加工への対応: ワイヤーカットなどの精密加工機も完備しており、微細な加工や高精度が求められる部品にも対応可能です。これにより、加工できる部品の幅が広がり、より複雑で創造的な設計の部品にも挑戦できます。

「手のひらサイズ」小物部品への特化による専門性

榊原工機は「手のひらサイズの部品を中心に、小物部品なら何でも加工OK」としており、金属も樹脂も相談可能としています。この得意分野への特化も、柔軟な小ロット生産を実現する上で重要な要素です。

専門性の深化: 特定のサイズ帯に特化することで、そのサイズの部品に最適な加工技術、治具、ノウハウを深く蓄積できます。これにより、より複雑な形状や高い精度が求められる小物部品に対しても、効率的かつ高品質な加工が可能となります。

多様な業界への対応: 「手のひらサイズ」の部品は、医療機器、電子機器、精密機械、航空宇宙産業、あるいはガレージブランドのオリジナル製品など、多岐にわたる業界で必要とされます。この特化が、多様な顧客からの小ロット・試作依頼に対応できる強みとなっています。

お客様との「共創」を促すコミュニケーション

「機械部品加工の駆け込み寺」としての信頼

榊原工機は、お客様から「機械部品加工の駆け込み寺的存在」と呼ばれることがあります。これは、他社で「加工に困った」「納期に困った」といった難題に直面した際に、最後に頼れる存在として認識されている証拠です。

包括的な課題解決能力: 「加工に困った。納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多いです」という評価は、私たちが単に加工を引き受けるだけでなく、お客様の抱える問題を包括的に理解し、その解決までをサポートする能力を持っていることを示しています。

試作開発の段階で発生しがちな予期せぬトラブルや仕様変更に対しても、柔軟かつ迅速に対応できるのは、多能工エンジニアの総合的な問題解決能力があってこそです。

「プロに聞きました」シリーズによる情報提供

榊原工機では、ウェブサイトで「プロに聞きました」シリーズを展開し、お客様が抱えやすい疑問や課題に対する具体的な情報を提供しています。

見積依頼のコツ: 「発注担当者必読!見積依頼のコツと部品加工の見積内訳を徹底解説」のような記事は、お客様がよりスムーズに見積もりを依頼し、適切な価格で加工を依頼するための知識を提供します。

急ぎの部品加工と特急対応の実態: 「急ぎで部品加工を発注するときのコツ 愛知県の金属加工のプロが教える特急対応の実態」といった記事は、お客様が短納期で加工を依頼する際の注意点や、プロの視点からのアドバイスを提供し、現実的な期待値を設定するのに役立ちます。

品質認識のギャップ解消法: 「部品調達における品質認識のギャップ解消法 金属加工のプロが教える円滑な発注のコツ」は、お客様と加工業者の間で生じやすい品質に対する認識のズレを解消し、より円滑なコミュニケーションを促します。

直接対話を重視するアプローチ

小ロット生産や試作において、お客様との密なコミュニケーションは成功の鍵です。榊原工機では、この点においても独自のアプローチを取っています。

「もしも、お急ぎの場合は社長はお話し好きなのでメールで返信を待つより、電話して事情を説明することをお勧めします」というメッセージは、形式にとらわれず、直接的な対話を通じてお客様の緊急性と要望を正確に把握しようとする、私たちの誠実なアプローチを示しています。

電話での直接的なコミュニケーションは、メールでは伝わりにくいニュアンスや緊急性を正確に伝え、迅速な判断と対応を引き出す上で非常に有効です。この姿勢が、迅速かつ柔軟な対応に繋がり、お客様の期待を超えるソリューションを提供することに繋がっています。

ものづくり文化と環境:創造性を育む「工場に見えない町工場」

ユニークな外観とアットホームな雰囲気

榊原工機の工場は「ホームセンターとお風呂屋さんに挟まれたところにある工場に見えない町工場です」と表現されるほど、従来の工場イメージとは一線を画しています。

「木のぬくもりと緑にあふれた『あたたかい町工場』」は、そのユニークな外観だけでなく、2階の事務所も「木の温もりを感じる」空間となっています。このような環境は、従業員にリラックスした雰囲気を提供し、固定観念にとらわれない自由な発想や創造性を育む土壌となっています。

アットホームな来客対応: 「階段下のピンポンを押して頂き、2階の事務所へ是非どうぞお越し下さい。たまに黒猫のノア君もいます」という案内は、お客様にとっても親しみやすく、気軽に相談しやすい雰囲気を醸成しています。

このようなオープンでアットホームな環境は、お客様が気軽に技術的な相談をしやすくなり、それがより良い「共創」に繋がる土台となります。

自社製品開発への挑戦と創造性

このユニークな環境は、単に気分が良いだけでなく、ものづくりに対する情熱や探求心を育む上で重要な役割を果たしています。

自社製品への挑戦: 榊原工機が自社製品として高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」を開発・製造していることや、「SAKAKI Gear(自社製品)」を展開していることは、私たち自身のものづくりへの強いコミットメントと、高い技術力を示すものです。

このような自社での挑戦を通じて培われたノウハウやクリエイティブな発想は、お客様の試作開発支援にも惜しみなく提供されます。

ガレージブランド・個人ブランドの支援: 大企業だけでなく、「ガレージブランド・個人ブランド」の試作開発も全力でサポートする姿勢は、榊原工機が「ものづくり」の可能性を広げ、新たな価値創造に貢献しようとする意思の表れです。

アイデアはあっても技術的な壁にぶつかる顧客に対し、多能工エンジニアの知識と経験を活かして、最適な材料選定から加工法、さらにはデザインのアドバイスまで行い、共に製品を形にしていきます。

まとめ:お客様と共に創る「ベストパフォーマンス」

榊原工機が、お客様のご依頼に「いつもベストパフォーマンスで応える」ための秘訣は、単一の要素に集約されるものではありません。クリエイティブな思考プロセス、多能工エンジニアの総合力、バリエーション豊かな設備群、密なコミュニケーション、そして創造的な企業文化。これらすべてが複合的に組み合わさることで、真の「ベストパフォーマンス」を実現しています。

私たちは、単に図面通りに部品を製造するだけでなく、お客様の抱える課題全体を理解し、その期待を超える解決策を提供することを使命としています。お客様にとって単なる外注先ではなく、共に未来を創造する強力なパートナーとしての価値を提供し続けます。

難易度の高い試作や小ロット部品加工、これまでの常識にとらわれない新しいものづくりに挑戦をお考えでしたら、ぜひ榊原工機にご相談ください。きっと新たな可能性と「ベストパフォーマンス」への道が開かれるはずです。